ハドリアヌス帝の回想9ー巨神族かオリンポスの神々か
ハドリアヌス帝の回想には、ところどころでギリシャ神話の神々が登場します。
10年続いた神々の大戦、ティーターノマキアー。
クロノス率いる巨神族ティーターンとゼウス率いるオリュンポスの神々の戦いです。
この戦いで、ティーターン族は敗北しタルタロスの深淵に閉じ込められました。
そして勝利したオリュンポスの神々の支配が始まります。
各人は短い人生の途上において、不撓不屈の希望か賢明な諦念か、混沌の快楽か安定のよろこびか、要するに巨神族かオリンポスの神々かいずれかをたえず選ばねばならぬということである。二つのうちのひとつを選ぶか、それともいつの日か二つを合致させることに成功するかである。
Chaque homme à éternellement à choisir, au cours de sa vie brève, entre l’espoir infatigable et la sage absence d’espérance, entre les délices du chaos et celles de la stabilité, entre le Titan et l’Olympien. A choisir entre eux, ou à réussir à les accorder un jour l’un à l’autre.
Marguerite Yourcenar, Mémoires d’Hadrien(『ハドリアヌス帝の回想』 多田智満子訳)
ティーターノマキアーという神々の間での戦争があったことはこの本で初めて知りました。
ヨーロッパの文化に深く溶け込んでいる神話の神々は、とても魅力的なのですが、
断片的にイメージを持つことしかできず、頭の中が整理できていません。
アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』に登場するシーシュポスは印象的でしたが、
ふと考えるとこのシーシュポスさえ、その位置づけが不明確なまま。
ゼウスの怒りを買って、巨大な岩を山頂まで繰り返し運び続ける苦行を課されたエピソードで有名ですが、
他にもいろいろ逸話があり、やんちゃなキャラだったようでさらに興味が湧きました。